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空気
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「現在、雑人すなわちヘルニヤ人といったたぐいの浅薄な理解がひろまっていることをわたしは恐れている。ヘルニヤ民族はまぎれもなく真正の雑人であるが、雑事ンはヘルニヤ民族につきるものではない。すでに述べたように、雑人とはわれわれのごとき選ばれた人間にとっての他者である。この両者の弁証法的関係は、そのまま神とその他者である人間との対立関係、より高位の弁証法的関係へと転化させることができるだろう。それについてはすでにさきほどから十分すぎる示唆を与えてきたことでもあり、これ以上の言及はさしひかえたい。諸君の鋭敏な想像力はわたしのいわんとしたことの意味をたちどころにさぐりあてることと信じる。したがっていかに述べるのは諸君の中のもっとも鈍重な精神を顧慮して行う蛇足的説明にすぎない。まず、ヘルニヤ人が雑人であることというこの事実ほど明快なものはあるまい。ひとはだれでもこの事実に快い満足をおぼえるはずだ。というのも安んじて軽蔑し憎悪しうる他者を共有することが人間社会の本質的な存立条件であるからだ。たとえば2人の子供が路傍で出会って遊び始めたとしよう。そこにどんなことが起こるか?1人は他の1人を支配し始め、玩具をとりあげ、犬やウマや犯罪人の役割をふりあて、要するに他方を屈従させるだろう。2人の人間が出会ったとき、かならずこうしたことが起こらずにはいないのだ。ここに生じた優劣関係は、あらゆる個人や集団、民族などの間にも起こりうるし起こらざるを得ない。人間が集まるところにはつねにピラミッド形の序列の体系ができあがるのである。支配するものとされるものとが層をなして積み重なり、ひとは上の層からは支配されると同時にしたの層を支配する。ある精神分析学者がいっているように──次いでながらこの男の著作は全体としては陳腐で我慢できないものだ、すみやかに焚書処分に付すべきである──健全な人間がサディコマゾヒストであるとすれば、こうした関係こそ人間を一個の社会へと組織するための根本原理であるはずだ。ところで、このピラミッドの頂上には、必然的に、支配するだけで支配されることの無い一者が存在せざるを得ないだろう。これは自明の理だ。そしてその地位をしめているのがこのわたしである。他方、低い卑賤な層に属する人間も、自分たちが存分に侮蔑し支配する事のできるような他者をもつ権利があるだろう。これをおしつめていけば、最後には支配されるだけでけっして支配する事のない人間の屑がピラミッドの底部に沈殿せざるをえない。実際、こういうものが存在しなければ人間は承知しないのだ。この人間のカス──それは人間とよべるのかどうか疑問であるが、それこそ雑人であり、ヘルニヤ人なのだ。だれもがこの雑人に対しては心ゆくまで憎悪を燃やし、石を投げつける事ができるわけである。以上はたての関係で雑人の成立を分析したものであるが、今度は横の関係で論じてみよう。この分析視覚には支配服従や優劣の序列といった観念がはいってこないので、人間の平等を唱えるヒューマニストにも好評を博する事だろう。たとえば人間が豚のようにおしあいへしあいしながら集団を作ることを考えてみるとよい。まったく愚劣なことではあるが、人間は道徳あるいは掟というねばねばしたものを分泌して離れがたく凝集するのだ。そしてそのさい、なんとしても凝集しえない分子がその外に押し出されるのであって、これこそ雑人にほかならない。首尾よく集団に所属した人間たちは、このはみだしてうろうろしている雑事ンをみると抑えがたい残忍な悦びと安堵とを感じ、同時に自分たち同士のやさしい連帯感にみたされるのである。かれらのささやきかわす愛と平等のお題目は、こうして、共通の嫌悪の対象である雑人の存在を前提にしていることが明らかであろう。そうだとすると、安直なヒューマニズムや人間平等の観念などで自分んをごまかす必要もあるまい。人間が不平等であることは一種の自然法則ともいえるほどだ。端的に申そう。わがクルト民族はもっとも優秀な民族である。ヘルニヤ人は申すに及ばず、他のあらゆる民族はわれわれの足下に屈従すべきものだ。ではだれがそれを保証するのか? わたしが保証しているのである。わrわれの優秀性とそこから生じる使命を決定するのはわれわれ自身であるが、凡俗な人間はそうする意力に欠けるだろう。だからわたしがすべての責任をもとう。わたしが一切を保証するのだ。クルト民族はほかのあらゆる民族を抹殺しなければならない。世界はわれわれのものである。われわれの戦争は地上から他民族を掃討することを目的としているのだ。領土の拡張はその手段に過ぎない。われわれは富の掠奪を望んでいるのではない。目障りな人間どもの絶滅を期しているのである。雑人のいない世界こそわれわれのユートピアだ。現在我々はめざましい勝利をかさね、刻々と版図をひろげつつあるが、肝腎のこの目的自体がややもするとなおざりにされているのは遺憾である。第一に占領地区から狩りだしたヘルニヤ人を一掃能率的に撲滅せよ! それだけではない。敵国の捕虜については、戦闘員、一般市民の別なく雑人規定を適用すべきである。さらに、クルト帝国内にも、雑人規定を適用すべき人間が少なからず潜在しているのだという事実を指摘して、諸君──とくに親衛隊、秘密警察、ならびに突撃隊の責任者諸君の注意を喚起しておきたい。なお、この席上でK氏に公式にお伝えしておきたいが」といってH総統はKのほうをふりかえった。ははてしなくつづく演説のあいだ執拗に襲い掛かる睡気とたたかいつづけていたが、はっとして力いっぱい眼をみひらいた。H氏はその歯ブラシに似た口髭の舌に奇妙な諧謔的な微笑を浮かべながらいった。引用以下宣伝

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