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 5月終わりから8月頭にかけて実験に次ぐ実験によりPrecelysマスターの名をモノにした俺に、今週からプラスミドコンストラクションの仕事が言い渡された。


要するに遺伝子組換え技術である。

どーやるかというと、業者から買い付けた「欲しい遺伝子が含まれたプラスミド」から『欲しい遺伝子』を取り出して、こちら側で用意したプラスミドに組換え、菌に遺伝子導入するのである。

つまり、本来菌連中の持っていない遺伝子を科学技術により発現させ、大量に合成させるのである。標的になるのは無論、PA-PB1-PB2のサブユニットで構成されるインフルエンザウイルスRNAポリメラーゼである。

細胞にインフルエンザウイルスを感染させ、核分画を集めることでも目的のタンパク質は取り出せるのだけれど、このやり方だと非常に手間がかかるし、大量に手に入れることが出来ない。何故なら細胞培養は時間がかかり、また細胞は状態が変化しやすいので再現性に欠けるからだ。

今回使うのはイースト菌、つまり真菌類である。こいつらは真核生物であるが単細胞生物であるため、培養が非常に楽であり、そして個体差が細胞株に比べれば圧倒的に少ないので非常に便利なのだ。

我が本田研究室は細胞培養と菌の培養の両方を行っている。こんなことしてる研究室はめったにない。その長所を最大限活かすのがこのやり方なのだ。
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